新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

電話番号:025-245-0123(受付日時:平日9:00~17:00)
受付日時:平日9:00~17:00

相談受付フォーム(予約専用)

相談受付フォーム(予約専用)

2026年11月4日

モンスターペアレントとカスハラ


当事務所ホームページの10月21日記事で、本年10月1日からカスハラ対策が事業主の義務とする法律が施行されたことを紹介いたしました(土屋俊幸弁護士記事)。
カスハラという言葉が登場する以前からの問題として、教育現場におけるモンスターペアレントがあります。思い起こしてみればモンスターペアレント問題こそカスハラのはしりともいえるかもしれません。
この言葉自体は最近聞かれなくなったようですが、現実には、学校現場における保護者をめぐる問題は、決して収束に向かっているわけではなく、SNSの普及などによって、ますます深刻化・複雑化しているのが現実のようです。


さて、文科省は、カスハラ対策の法施行に伴い、労働施策総合推進法33条のカスハラ対策の条文を学校用に読み替えて、
学校等において行われる
ⅰ 保護者や地域住民等の言動であって、
ⅱ 教職員等が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
ⅲ 教職員の就業環境が害されるもの
を教育現場におけるカスハラと定義し、モンスターペアレント問題はカスハラ対策として取り組まれるべきことを明らかにしています(「学校と保護者・地域住民等とのより良い関係構築のためのガイドライン」2026年8月公表)。


 教育現場において悪質なモンスターペアレント問題が存在し、そのことにより教職員の心身の健康が損なわれている現実がある以上、この文科省の方針は正当なものとして支持されるべきであると思います。


ただ、注意が必要なのは、保護者からすれば、学校教育という場所は、わが子の日常生活・教育の重要な部分を継続的に委ねる場にほかならず、保護者と教師の関係は、レストランや小売店等における顧客と店員の関係とは同列に扱うことが出来ないことです。また教員には教職員としての専門性が期待されているのも事実です。


 保護者の行き過ぎた言動を問題として、教師が保護者に損害賠償を求めて訴えた裁判例がいくつか存在し、その代表的な例とされる横浜地裁平成26年10月17日判決があります。


この判決では、「小学校教育においては,学校,教師及び父母のそれぞれが,子どもの教育の結果に利害と関心をもち,教師の指導方法を含めた教育の内容及び方法等につき関心を抱くのであって,それぞれの立場から上記教育の内容及び方法等の決定,実施に対し意見を述べ合いながら協力していくことが自然かつ必要不可欠なものといえるから,父母らが学級担任の自己の児童に対する指導方法について要望を出し,あるいは批判することは,当然許されることであって,教師はできる限り父母の要望又は批判に耳を傾け,これを受け止めるよう努力すべきであり,その内容が教師としての能力や指導方法に関する批判や非難に及ぶことがあったとしても,直ちに担任教師に対する不法行為を構成するような違法性があるということはできない。しかしながら,父母らのかかる要望,批判又は非難が,担任教師に対する人格攻撃に及ぶなど上記目的による批判ないし非難を超えて,担任教師が受忍すべき限度を超えたものである場合には,同人の人格的利益である名誉感情を毀損するものとして違法性を認めることが相当である。」との一般論を述べた上で、当該保護者の言動を違法と判断しました。


つまり、児童・生徒に対する指導方法への要望や批判は、教師の能力や指導方法の批判や非難に及ぶ部分があったとしても直ちに不法行為に該当するものではないとしている点に留意が必要であり、その限度を超えて、人格攻撃に及ぶなど教師の受忍限度を超えた場合に違法としているのです。


なお、裁判所は、パワハラの違法性を判断する上でも、当該言動が、正当な叱責等ではなく、当該言動が「人格攻撃」に及ぶものであるかどうかを重要視する姿勢を示しています。


モンスターペアレント対策については、教育現場において、教職員の人権が守られるよう、管理者による積極的な対策が求められるとともに、カスハラ対策法の適用については、保護者の意見・要望に過度の萎縮効果を及ぼすことのないよう、教職員の人権と学校で学ぶ子どもたちの人権がいずれもが十分に尊重されることを念頭に運用されていくことが求められます。

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。

トップへ戻る
新潟合同法律事務所