新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2013年1月17日

三手の読みと大局観

年頭に当たり、心にとどめておきたい教えを一つ紹介したいと思う。
十代の頃からトップ棋士として活躍し、四十を過ぎた今でも他を寄せつけない強さを誇る将棋の羽生善治三冠王は、多くの著書や講演で名言を残しているが、その中でも、「三手の読みと大局観」の重要性を語る部分が、強く印象に残っている。その二つを常に意識すれば、大きな間違いはしないというのだ。
「三手の読み」とは、こちらがこうしたら、相手はこうするであろう、そこでこちらはこうするというものである。羽生氏は、この三手の読みでは、正確な読みが必要であると語る。「Aという手段に対して、Bと来るだろうから、そこでCとしよう」という自分勝手な一本道の読みだけではなくて、相手がBではなくて、Dと来た場合には、返す手があるのかを考えておかなければならない。返す手がないのであれば、Aという手段は間違っている可能性が高く、見直す必要があるということになる。一方で、羽生氏は、それよりも先(五手の読み、七手の読み)については、検討する選択肢が多くなりすぎるし、不確実なことに対する読みになるので、余り深刻に考えても仕方がない。無理に先を読み過ぎようとすると却って誤ることがあると述べている。
羽生氏は、もう一つ、「大局観」の重要性を指摘している。大局観とは、物事の全体的な状況や成り行きに対する見方・判断である。長年の経験がもたらす形勢判断、見通し、さらには最終的にあるべき姿などを想定して、現時点で、大体このようにしていれば大きな間違いはないとか、最終的に目指す方向のためには今こうしておくべき、などの状況判断に基づいて現在の行動を決めるという観点である。
羽生氏はその両者のバランスを常に意識しながら、無数の選択肢のある将棋の局面において最善と思われる選択肢を選び、勝利を続けているのである。
「三手の読み」と「大局観」が重要であるのは、相手との関係が敵対的なものである場合だけではないだろう。日常的な他者とのコミュニケーション・共同作業の場面でも妥当する。独りよがりの思いつきの行動は、えてして失敗の原因となる。
大枠での方向性を意識しながら、目下の事態に対しては注意深く正確に分析して行動を決めるという当たり前のことが、日々の忙しさの中で継続が難しくなることがある。時々、この言葉を思い出して、自分の行動を振り返る心の余裕を持ちたいと思う。
弁護士 近 藤 明 彦

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。

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