新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2011年5月18日

震災からの復興へ向けて

(事務所誌「ほなみ」第108号掲載)

たった一瞬ですべてを失うとはまさにこのようなことを言うのでしょう。
東日本大震災で命を落とされた方々、被災された方々に対し、改めて、お悔やみとお見舞いを申し上げます。
震災からの復興に必要なことは、余りにも多く、ここですべてを語ることは到底できませんが、法律家の視点から、二つのことを述べておきたいと思います。
これまでの自然災害は、主として、家屋の損壊に焦点が当てられていました。しかし、この度の被害は、家屋の損壊だけではなく、生活基盤全体が津波によって失われてしまったことに特徴があります。農業も、漁業も、勤務先もすべて失われてしまった方々が大勢おられます。被災者に対する支援については、被災者生活再建支援法がありますが、これは住居家屋の損壊に対する支給は定めていても、農業や漁業等の事業損害等に対する補償については定めがありません。これは、事業に対する補償は、各自、民間保険等で備えるべきとの考えによるものです。しかし、「絶対安全」と言われていた原発が壊れてしまうような今回の災害について、「自己責任」を貫くことができないことは明らかです。被災者生活再建支援法は、大幅に拡充されるか、別の立法措置が必要です。
次に、原発事故による損害の補償です。これについては、原子力損害賠償法により、不可抗力等による事故でない限り、事業者である東電に無過失・無限の責任が生ずることになります。今回の地震と津波が如何に数百年に一度の規模であるとしても、東電は責任を免れるべきではありません。むしろ、問題は、東電が賠償義務を負うとの前提に立っても、財源不足により賠償が制限されるのではないかとの点です。東電が責任を負うことになると、政府は東電との補償契約に基づき、一事故あたり1200億円の補償金を東電の賠償責任のために負担することになりますが、それでは、到底損害を賄いきれません。それ以上の損害については、東電が自ら負担することができなければ、国が東電に財政投融資をするか、金融機関から東電への融資に政府保証を付ける案などの方法が考えられますが、財源不足により、損害の範囲や立証等について高いハードルが課されるおそれがあります。東電も政府も原発は絶対に安全と述べていましたが、それが裏切られる結果となりました。被災者の生活再建のためには、東電と政府に責任を果たしてもらう必要があります。
新潟県弁護士会では、今回の災害について、対策本部を設置し、被災・避難された方々に対する無料法律相談の実施や弁護士の被災地への派遣などに取り組んでいます。被災地の一刻も早い復興と被災者の生活再建のため、すべての英知を結集することが必要です。

弁護士 近 藤 明 彦

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の方の納得を最優先にし、依頼者の方から感謝されることを目標に頑張っています。個人的には、以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が非常に多く、そのことが大変に励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えられるからです。

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