新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2013年6月17日

水俣病最高裁判決と救済制度の見直し

 新潟水俣病の公式発表があったのが、今から48年前の6月12日。水俣病特措法の救済申請の受付は昨年7月末で締め切られましたが、受付に間に合わなかったり、その後に自分が水俣病被害者であることに気づいた多くの方々は、救済を受けられない状態が続いています。
 現在でも利用できるのが公健法に基づいて水俣病の認定申請を新潟県や新潟市にすることですが、これまで新潟県内で認定申請をした2422人のうち、認定された人は702人で、取り下げたり棄却された人が1699人。認定される人は3割にも満たないため、水俣病被害者が認定を受けることは決して容易ではありません。
 しかし、水俣病の認定をめぐる4月16日の最高裁判決を契機に、認定制度に対する関心が高まっています。
 4月16日の最高裁判決は、これまでの行政の認定指針とされてきた「昭和52年判断条件」を事実上否定し、「症候の組み合わせが認められない場合」でも、「経験則に照らして諸般の事情と証拠関係を総合的に検討」して「個別具体的な判断により水俣病と認定する」ことができると判示しました。
 その結果、今後、県や市が、従来の認定指針である昭和52年判断条件を使って認定申請を棄却すれば、認定が誤っているとして裁判所に取消訴訟が出されることが予想されます。
 環境省は、最高裁判決後も、「総合的検討のあり方は検討するが、認定基準も運用も間違っていない」という姿勢で、これまでの認定のあり方を反省する様子は見られません。
 しかし、総合的検討のあり方を検討するとしても、個々の被害者を認定するかどうかの審査をする認定審査会が具体的な認定作業を進めるには、当然のことながら最高裁判決を踏まえて従前の認定基準を見直すことになりますし、新たな認定基準を検討するのは避けられないと思います。その場合、認定審査会の委員の人選をどうするのか、認定にあたって主治医の診断書をどの程度重視するのかといった点の検討も必要になりますし、補償内容が異なる水俣病特措法の「判定」基準と「認定」基準の違いをどのように考えるかについての合理的説明も求められるでしょう。新たな認定基準を策定するとすれば、これまでの水俣病の救済制度の全面的な見直しが必要になってきます。
 6月9日、新潟水俣病被害者の会と新潟水俣病共闘会議の合同総会に来賓として出席した泉田知事は、最高裁判決後、環境省に「認定基準の見直しだけでなく、水俣病の救済制度の抜本的な改革」を求めた経過を明らかにし、「腹を据えて水俣病問題の解決に全力を尽くしたい」と力強く挨拶しました。
(中村周而)
 

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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