新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2013年7月4日

統一協会の信者が家族や協力者を訴えた損害賠償事件

 違法な霊感商法や入教勧誘を行って他人に迷惑をかけていないだろうか。健康な生活を送っているのだろうか。統一協会信者の子どもを持つ親や家族の心配は尽きません。家族と信者が時間をかけて話し合い、お互いの信頼関係を深めることがとても大切なのですが、統一協会は信者に対して「反対牧師」対策などの教え込みを徹底しているため、信者が話し合いを拒否したり、話し合いの最中に統一協会から妨害が入ることもしばしばです。

 平成23年から東京地裁で争われている訴訟事件は、話し合いのために統一協会の信者と生活を共にした家族やその協力者に対し、信者が約2億円の損害賠償を請求している事件ですが、信者と家族の絆を破壊しようとする統一協会の狙いを改めて実感させます。

 原告から被告として訴えられているのは一緒に生活していた兄夫婦と妹さん。それに日頃から親身に家族の相談にのっていた2人の協力者も訴えられました。

 訴状によれば、家族が統一協会信者である原告を拉致監禁して棄教を強要するため、平成7年9月に自宅にいた原告を拉致、平成20年2月まで12年5ヶ月にわたって新潟市内や東京都内のマンションに監禁し、その間、2人の協力者が原告に対し、「統一協会の信仰を棄教しなければ監禁を解かない」などと脅迫して棄教を強要したと主張しています。

 家族はもちろん2人の協力者もこのような事実を強く否定しています。私も代理人の一人である新津福音キリスト教会の松永堡智牧師の場合は、15年以上も前の平成7年10月から数ヶ月の間、家族に要請され、しかも原告の了解を得て話し合いに参加していたに過ぎません。平成20年2月に自宅を出た原告は、家族や関係者を刑事告訴しましたが、不起訴処分となり、検察審査会も、「不起訴処分は相当」という結論を出していますので、常識的に考えれば決着済みの事件といえます。

 それにもかかわらず、なぜ、原告は裁判を出したのか。私は、統一協会が信者である原告を利用して2人の協力者を誹謗中傷するなどして、信者と家族の絆を破壊しようとする狙いがあるように実感します。

 原告と統一協会は、「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」の名前入りのビラを全国各地で配り、インターネットでも流しています。そこには「統一教会信者の拉致監禁・強制改宗に長年関与してきた松永堡智牧師による『拉致監禁指導ビデオ』と手書きの『拉致監禁マニュアル』が見つかりました」などと書かれています。訴訟でもこれらを証拠として提出して、松永牧師ら協力者が「原告の拉致監禁を指導・総括」していたと主張しています。

 しかし、この文書は、昭和62年に開催された「原理運動(統一協会)対策キリスト者全国連絡協議会」(原対協)に出席した松永牧師が、その会議で、家族の話し合いに関与した人達の体験や意見を個人的にメモし整理したもので、「拉致監禁マニュアル」といった内容もものではありません。「ビデオ」も、松永牧師が子どもを救出する際の親の心構えなどについて分かりやすく説明できるようにするために作成したもので、原対協とは無関係のものです。これらの文書やビデオについては、松永牧師の教会に通っていた統一協会の元信者が教会から無断で持ち出し、統一協会の担当者に渡していたことが最近明らかになりました。

 東京地裁の裁判は、6月17日で訴訟関係者の尋問を全て終え、9月には結審が予定されています。

                           (弁護士 中村周而)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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