2013年9月5日
憲法の生命線を守れ
(事務所誌「ほなみ」114号掲載)
日本国憲法は、憲法改正の要件を第96条で定めています。これによると、憲法改正には、①各議院の総議員の3分の2以上の賛成で発議すること、②国民投票による承認を経ること、が必要とされています。
自民党の憲法改正草案では、この憲法改正の発議要件を衆参議院それぞれの過半数の賛成に変更しています。日本維新の会も同様の主張をしています。
自民党が公表している「日本国憲法改正草案Q&A」には、こう書いてあります。 「憲法改正は、国民投票に付して主権者である国民の意思を直接問うわけですから、国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまうと考えました」
確かに、主権者である国民の意思が反映されないというのはおかしい、と思われる方もいるかもしれません。 しかし、仮に国会における過半数の賛成で憲法改正を国民に発議できるとすれば、国会の過半数の議席を占める政権与党だけの賛成によって憲法改正の発議が可能となります。ということは、野党・少数政党による意見は反映されず、国会における慎重な審議がなされないまま、憲法改正手続が進むということです。慎重な審議がなされないということは、国民が改正内容や問題点を十分に把握検討できないうちに、国民投票を強いられるおそれがあるということになります。当たり前のことですが、改正内容や問題点を十分に理解し、国民相互間で議論し検討したうえでなければ、主権者として適切な判断をすることは困難です。 さらにいえば、国民が憲法について意思表明をする機会は、国民投票に限られたものではありません。まずは、自由な言論や国民の代表者を選挙する過程においてなされるものです。憲法改正についての国民投票は、このような国民的な憲法論議が熟した後に、最終的な決断をするために行われるものです。
したがって、憲法改正の発議要件を緩和すれば、主権者である国民の意思が反映されることになるという自民党の主張は全く理由がありません。
そもそも、憲法は、国家権力に歯止めをかけて、個人の人権を保障するものです。その憲法の改正要件を緩和するということは、国家権力への歯止めという最も根本的な憲法の本質を変えてしまう危険性をもっています。まさに憲法第96条は憲法の生命線であり、これは絶対に守らなければならない規定なのです。
弁護士 小川 和男
著者:小川 和男
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