2013年12月9日
水俣病被害者手帳の交付と認定申請の制限
水俣病特別措置法によって水俣病被害者手帳を交付された人は、それを返上しても公健法の認定申請をすることができないのか。被害者手帳を返上しても公健法の認定申請はできないとする通知を新潟県などの関係自治体に発していた環境省の対応に、「権利の侵害ではないか」との声が高まっています。
特措法によれば、水俣病被害者のうち四肢末梢優位の感覚障害を持っている人が一時金対象者と判定された場合は、一時金210万円の支給と国や県から医療費や療養手当が受けられます。一時金対象者と判定されない場合でも一定の感覚障害を持っていて、水俣病にも見られる10症状のいずれかを持っていれば被害者手帳が交付され、医療費の自己負担分の支払いが不要になります。
主治医からは水俣病であると診断されたのに、判定検討会で一時金対象者と判定されなかった被害者は、異議申立をするか(但し、新潟県以外では異議申立は認められていません)、公健法の認定申請や損害賠償訴訟をすることができ、水俣病と認定されれば、昭和電工から1500万円の支給を受けることができます。とくに今年は最高裁判決や公害健康被害補償不服審査会でこれまでの厳格な認定基準を否定し、幅広い判断がなされているため、これまで認定されなかった人が改めて認定申請をするケースも増えているようです。
環境省の言い分は、手帳の交付を受けた場合は、一時金も手帳も受けられない人とちがって手帳交付という救済措置を受けているから、手帳を返したとしても、認定申請はできないということなのでしょうか。
しかし、「救済措置」を受けているといっても、一時金対象者に比べればその実質は微々たるもの。一時金や療養手当がもらえないという点では、手帳の交付も認められない人と殆ど同じです。厳格な認定基準が改められれば、水俣病と認定される可能性も出てきます。
環境省の担当者は、「特措法による被害者の救済は、地域における紛争の終結と表裏一体で、一度終結した紛争を再度起こすこと自体が排除されている」と説明していますが、紛争の解決を引き延ばしてきたのは、最高裁判決を無視して厳格な認定基準を改めようとしなかった環境省です。早急に厳格な認定基準を改め、認定申請を認め、認定作業を迅速に行う体制を整え、公正な認定判断が示されれば、紛争は終結するのです。認定申請を希望する被害者を姑息な手段で押さえつける方法では、紛争解決を先送りするだけです。
(中村周而)
著者:中村 周而
さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。
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