2014年1月10日
新年のお慶び申し上げます。
(事務所誌「ほなみ第115号」掲載)
当事務所に入所して3年がたちました。弁護士として「法律」を扱う仕事をする中で、「言葉」というものの難しさにぶつかりながらの日々を送ってきました。正確な言葉、伝わる言葉を選ぶことが、問題解決には不可欠だからです。さて、2013年も新しい言葉が生まれ、流行しました。弁護士として扱う仕事と関係のある言葉も多くありました
消費者問題では、「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」の新ネーミングとして「母さん助けて詐欺」が選ばれました。この種の詐欺の手法は、どんどん新しくなり、かつ巧妙になります。どのような手法の詐欺であっても、ピンとくるようなネーミングを選んでいただきたいものです。
労働問題では、長時間労働や、違法な労働環境にある企業が「ブラック企業」として取り上げられました。法律上労働者が保護されているのは、労働者が使い捨てにされてきた経験があり、これを改善・克服しようとしてきた歴史があるためです。労働者を使い捨てにすることはまさに歴史に逆行するものというもので許されません。
憲法問題では、表現の自由との関係で「ヘイトスピーチ」、知る権利や報道の自由、取材の自由などとの関係では「特定秘密」などの言葉が取り上げられました。表現の自由、報道の自由が保障されていることによって、市民はさまざまな情報に触れることができます。そして、自分が触れた情報を選択し、判断し、政治に参加することができるのです。しかし、単なる侮蔑的表現・差別的表現にそのような価値は認められないというべきです。また、「特定秘密」により、市民に情報が隠されてしまえば、選択、判断をすることができません。知る権利が十分に保障されてこそ民主主義社会が成り立つのです。
震災関連、原発事故関連では、「汚染水」「コントロールされている」などの言葉を多く聞きました。震災から3年が経過しようとする中で、原発事故の処理は遅々として進まず、被害、避難はいまだ続いています。まだまだ被災者支援・避難者支援の必要性は増すばかりです。東京オリンピックで「おもてなし」をする前にやるべきことはまだまだあるはずです。
今年も、当事務所の弁護士として、さまざまな法律問題や社会問題に全力で取り組んでいきたいと思います。相談、事件を通じ、紛争を解決を考えていく中でぶつかることの中には、「じぇじぇじぇ」と驚くことも少なくありませんが、親しみやすさと安心感を持っていただけるように頑張ります。なお、「倍返し」をご希望も少なくありませんが、人権擁護、損害を回復するといった弁護士の職業上、それができる場面は多くはありませんのでご了承ください。
今年はどんな言葉が流行するのでしょうか。暗い言葉や後ろ向きな言葉ではなく、明るい言葉や前向きな言葉が流行してもらいたいと思います。
弁護士 二宮 淳悟
著者:二宮 淳悟
2010年12月 当事務所入所 ・新潟県弁護士会 東日本大震災復興支援対策本部 本部長代行 ・新潟県弁護士会 憲法改正問題特別委員会 副委員長 ・新潟県弁護士会 糸井川大規模火災対応本部 事務局長 ・日本弁護士連合会 災害復興支援委員会 運営委員 ・関東弁護士会連合会 災害対策協議会PT 委員