2014年6月5日
ある建物の欠陥工事事件
平成5年、Aさんは、B社に依頼して、セカンドハウスとして自然林の中に小さな木造二階建ての建物を建てました。
ところが、構造上の欠陥から、床下からの絶えず湿気が流入し、室内外の温度差から絶えず大量の結露が発生してしまい、建築後2~3年すると天井板に黒い染みが広がったり、天井から床にポタポタ水滴が落ちてくるようになりました。
AさんはさっそくB社に相談し原因調査と補修を要請したところ、B社は 「雨漏りが原因だ」として屋根の補修をするだけでした。素人のAさんは「建ててくれた業者がそういうのだから」と思い、それで我慢しました。
しかし、屋根の修理は何の効果もありませんでした。天井板の黒い染みはますます広がり、天井からは水滴が落ち続け床に水たまりができるほどになりました。Aさんは何度もB社に相談しましたが、そのつど満足な調査もせず「屋根の雨漏りが原因だ」と言われ続けました。
平成19年、我慢の限界にきたAさんは、B社とは別の建築会社に相談し調査してもらいました。すると、湿気が流入する原因が、床下の換気が悪く、溜まった湿気が抜けず床下から家の中へ上昇し侵入するためだと分かりました。
AさんはB社に根本的な修復を求めましたが、B社は拒否しました。
平成20年6月、AさんはB社を相手取って、新潟地方裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしました。対するB社の主張は相変わらずでした。そこで裁判所から中立的な鑑定人を選んでもらい鑑定をしたところ、Aさんの主張をほぼ認める結果が出ました。しかしB社はその受け入れを拒否しました。
平成24年9月、鑑定に沿ったAさん勝利の判決が出ました。しかしB社は東京高等裁判所に控訴しました。B社は、「Aさんの建物管理が悪かったのが原因」「木造だから年月が経過し、自然と劣化した」「湿気の多い土地に建てたから」などと言ってきました。
東京高等裁判所は強力に和解を進め、平成26年3月、B社がAさんに一定の金額を支払うことで和解が成立しました。
6年近く続いた裁判は終了しましたが、建物が建ってから21年になります。Aさんば、なぜもっと早くB社が原因に気づいてくれなかったのか、早い時期に調査していれば原因はもっと早く判っていたはず、こんな長い間苦しまなくても良かったのにという複雑な気持ちでいます。
(弁護士 金子 修)
著者:金子 修
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医療事故(民事賠償請求)のはなし(6)