新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2014年8月5日

環境省も検討を始めた水俣病の「新たな救済策」

 「水俣病被害者を救済」し、「水俣病問題の最終解決」を目的として立法された水俣病特別措置法(特措法)の判定作業もいよいよ大詰めを迎えました。新潟県ではまだ完了していませんが、熊本県では6月末に完了していたことが判明しました。この法律による救済申請は、2012(平成24)年7月末に締め切られましたが、新潟県では2108人、熊本県では4万2961人、鹿児島県では2万0082人、計6万5151人が申請。この申請者数は、国の予測の2倍以上だったと報道されています。

 しかし、特措法で「対象外」と判定されたり、申請が締め切られた後に水俣病と診断された水俣病被害者が、国や加害企業などを被告として損害賠償を求めるノーモア・ミナマタ第2次訴訟が熊本地裁や新潟地裁で進められており、今後、近畿や東京でも提訴が予定されています。また、新潟では、特措法で非該当と判定された被害者92人が県に対して行った異議申立ての審理も進められており、「水俣病問題の最終解決」には程遠い状況にあります。

 このような中で、7月9日、環境省が、公害健康被害補償法(公健法)に基づく水俣病の認定申請者のうち、特措法の救済申請をしていなかった人への新たな救済策を始めたという報道が流れています(但し、「新たな」を省いて「対応策」と表現した新聞もあります)。

 特措法は、公健法が認める「患者」よりも幅広い人を「水俣病被害者」として受け止め、救済する内容になっていますが、「特措法の救済措置の方針」(平成22年4月16日閣議決定)によれば、「特措法で被害者手帳の交付を受けた人は、公健法の認定申請を受けることができない」という趣旨の記載もあるため、公健法の認定申請者の中には、特措法の救済申請を見合わせた人もいて、結果的にはどちらの救済も受けていない人もいます。環境省によれば、公健法に基づく認定審査の未処分者は、現在約950人。そのうちの約200人が特措法の締め切り前に認定申請をしていたが、特措法の救済申請をしていたかどうかは不明で、対応策で検討する対象になるということです。なお、新潟では60人が公健法の認定申請をおこなっています。

 しかし、「救済策」の対象となる200人から外れた人の救済はどうなるのでしょうか。200人に限って「救済策」を検討する合理的な根拠はあるのでしょうか。このようなツギハギだらけとしか言いようのない「救済策」をこれから先も環境省にやらせて大丈夫なのでしょうか。

 現在、国や加害企業などを被告として提起されているノーモア・ミナマタ訴訟の原告は、新潟地裁で32人、熊本地裁で545人。新潟と熊本ではさらに追加提訴も見込まれており、近畿や東京でも年内に提訴が予定されています。

 また、950人といわれる公健法に基づく認定審査の未処分者も、四肢末端優位の感覚障害だけの水俣病の存在を認めた平成25年4月の最高裁判決を無視するような不当な認定棄却処分が出されれば、認定申請棄却処分取消訴訟や認定義務付け訴訟、さらには国や加害企業などに対する損賠賠償訴訟に発展することになるでしょう。

 昨年9月、新潟水俣病共闘会議など4団体は、提言「国は今こそ水俣病の全面解決を!-最高裁判決を踏まえ、新たな救済制度の確立を求める-」を発表し、その実現をめざして県民、国民に賛同を呼びかけていますが、「新たな救済策」を検討するとすれば、この提言でも述べているように、すべての水俣病患者を対象とする網羅的な救済制度を早期に確立することが必要です。

(中村周而)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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