新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2014年8月4日

基本給や〇〇手当に残業代が含まれているので、残業手当は支払わなくてもよい ?!

 政府が進めようとしている「残業代ゼロ」制度の創設は「過労促進法・ブラック企業合法化法の制定」などと批判され、労働組合やさまざまな団体から批判されています。「年収1000万円を超えておれば、過労死してもよいのか」という批判は労働者の使い捨てを容認する制度を創設することに対する痛切な批判となっています。

 未払残業が支払われないという相談の中に、その理由として、基本給や諸手当に残業代が含まれていると使用者から言われたというのがあります。特にほかよりも高い給与を支払っているので、残業分が含まれているといわれることがあります。いくら残業をしても残業代が支払われないのです。

 最高裁平成24年3月8日判決は、基本給を月額41万円とした上で月間総労働時間が180時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払い,140時間未満の場合に1時間当たり一定額を減額する旨の約定のある雇用契約であっても、①各時間外労働がされても,上記の基本給自体が増額されるものではないこと、②基本給の一部が他の部分と区別されて同項の規定する時間外の割増賃金とされていたなどの事情はうかがわれないこと、③基本給について,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできないという事情がある場合には時間外手当を支払う義務が使用者にあるとしました。

 月間水揚高に一定の歩合を乗じて支払われる歩合給制度となっているタクシー運転手の事例でも、最高裁平成6年6月13日判決は「時間外及び深夜の労働を行った場合にはその額が増額されることなく、通常の労働時間の賃金にあたる部分と時間外及び深夜の割増賃金にあたる部分とを判別することができないときは、歩合給の支払いによって割増賃金の支払いがなされたということができないとし、割増賃金の支払義務があるとしています。

 前記の最高裁平成24年3月8日判決には補足意見では、「便宜的に毎月の給与の中にあらかじめ一定時間(例えば10時間分)の残業手当が算入されているものとして給与が支払われている事例もみられる」が,その場合でも、そのことが雇用契約上も明確にされていなければならないと同時に支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていなければならないとしています。

 さらには「10時間を超えて残業が行われた場合には当然その所定の支給日に別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにされていなければならないと解すべきと思われるとも述べています。

 給与の中に含まれる残業手当が含まれているというだけでは、残業手当てを支払わなくてもよいということにはなりません。

 残業手当の計算がおかしい、支払いがなされていないのではないというお考えの方は新潟合同法律事務所にご相談下さい。

弁護士 土屋俊幸

著者:

パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。

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