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2015年2月6日

「イスラム国」事件と自衛隊

 『イスラム国』が人質の日本人を殺害した映像が全世界に流され、そのショックがまだ色濃く残っていた頃、日本の国会で「次世代の党」という政党の若い議員が「今の憲法では日本人を救うために自衛隊を派遣することすらできない。このような憲法はおかしい。憲法9条を改正すべきだ」と質問し、安倍首相もそれに対し肯定的に答弁していました。

 ちょっと待って。この若い議員も安倍首相も、もし自衛隊を現地に派遣できたら今回の事件は起こらなかったと言うのでしょうか。

2人の頭の中に描かれている「自衛隊の雄姿」というのはどういうものか。航空自衛隊の戦闘機が「イスラム国」を爆撃している姿か、陸上自衛隊の兵士が人質救出のため暗闇に乗じて中東の砂漠を息を殺して歩いている姿か。ハリウッド映画の世界か漫画アニメの世界か。

むしろリアルなのは、「イスラム国」を攻撃中戦闘機が墜落して人質になったヨルダン国のパイロットの姿。彼が日本人の殺される1ケ月近く前にすでに残酷なやり方が殺されていた事実は、自衛隊員やその家族には衝撃だったはず。「こんな危険を承知で自衛隊に入ったわけではない(子どもを入れたわけではない)」という思いが広がっているのではないか。そんな想像力もなく、「イスラム国」事件を憲法9条改悪に利用することこそ「平和ボケ」ではないでしょうか。

ある学者が、「イスラム国」が急成長した要因の一つが国家の崩壊・社会の無政府状態が長く続いたことであり、日本の役割は社会の安定ひいては国家の再建のためのインフラ支援(学校、道路、水道、電気、統治システムなど)にあると語っていました。これって憲法9条ですよね。

(弁護士  金子 修)

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