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2015年4月2日

新潟県が水俣病特措法の異議を認める救済決定

 

 3月30日、水俣病被害者特措法(以下「特措法」といいます)の異議申立事件で、新潟県は2人の申立人の異議を認める全国初の画期的な救済決定を出しました。

 

 決定の主文によれば、「本件異議申立てを認容し、新潟県知事が異議申立人に対して行った特措法に基づく給付申請を非該当とする処分を、一時金等対象者と認める処分に変更する」としており、一時金のほかに療養手当と療養費(医療費)が支給されることになります。

 

 2人の申立人は新潟市内と新発田市内に住む70歳代の女性で、いずれもノーモア・ミナマタ新潟第2次訴訟の原告です。

 

 決定書によれば、2人は、阿賀野市に生まれ、1960(昭和35)年4月と同年11月にそれまで住んでいた阿賀野川流域を離れて県外に転居しましたが、生まれた時から阿賀野川の川魚を毎日のように食べており、四肢末梢優位の感覚障害があります。

 

 これまで国は、1960(昭和35)年以前の阿賀野川は、相当高濃度のメチル水銀汚染は生じていないと主張していました。そのため、特措法の救済措置で定められた一時金等対象者の要件である「通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性がある」かどうかが問題となっていました。新潟県は、異議申立ての審理の中で、症候要件や疫学要件について専門家に鑑定を求めるなどして慎重な審理を進め、2人が、「救済措置の方針に定める一時金等の対象者に該当する」と判断したのです。

 

 特措法の救済措置の受付は、2010(平成22)年5月から始まり、2012(平成24)年7月末に締め切られました。環境省の発表によれば、2014(平成26)年8月29日時点で、一時金等対象者と認められた人は、3万2244人(申請者4万7906人中の67.30%)。このうち新潟県は1811人(申請者1973人中の91.78%)で、認容者の割合は熊本県の69.04%(申請者2万7960人中の1万9306人)、鹿児島県の61.78%(申請者1万7973人中の1万1127人)を上回っています。

 

 しかしながら、環境省は、非該当者が異議申立てをすることを認めず、熊本県や鹿児島県も環境省に追随して異議申立てを受理しませんでした。これに対し、わが国の著名な行政法学者からは、「環境省の見解は間違っている。異議申立ては受け付けるべきだ」という異論が相次いでいました(2012年11月30日朝日新聞)。

 

 このような中で、新潟県は、2013(平成25)年3月6日、非該当の処分を受けた3人について異議申立てを受理。さらに、「県の判定結果により、特措法5条に定める金銭の給付を受けるか否かという申請者の法的地位に変動をもたらす以上、県の判定には処分性が認められるとの考えから、このたびの決定に至った」という知事のコメントを発表し、「非該当」とされた人全員に「お知らせ」(教示)を受け取った被上告人の翌日から60日以内に異議申立てをすることができるという文書を送っています。

 

 その結果、これまで、非該当となった人のうち92人(阿賀野患者会の会員は43人)について異議申立ての審理が進められていました。3月30日には2人の申立人を含めて5人に決定が出ましたが、2人以外の処分内容は不明です。

 

 特措法によれば、一時金が支給されるためには、一時金等対象者と認める処分があった後、政府が関係事業者(昭和電工)に対して、一時金の支払いを要請し(5条4項)、関係事業者は、政府からの要請があった場合に、一時金を支給すると定められています(同5項)。

 

 新聞報道によれば、今回の処分に対し、環境省の担当者は、「特措法の運用の想定外。今後の対応は、新潟県の意見を聞きながら検討していく」とコメントしていますが、今後、環境省がどのように対応するのか、注意が必要です。

 

(弁護士 中 村 周 而)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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