2026年8月17日
当事務所における石綿被害救済事件への取組みのご紹介
石綿(アスベスト)による健康被害は、建設、鉄道、造船、運送、学校、工場、建物の改修・解体など、幅広い職場で発生しています。本稿は、当事務所が取り組んできた石綿被害救済の事例を紹介し、現在係属している訴訟へのご支援をお願いするものです。
1 はじめに
石綿は耐火性、断熱性、防音性に優れていたため、長年にわたり建材、断熱材、ブレーキ部品、接着剤、保温材などに広く使用されてきました。
石綿は、粉じんとなって空気中に飛散すると、直接取り扱った作業者だけでなく、その周辺で作業していた人も吸い込む危険があります。そのため、石綿製品を直接扱っていなくても、石綿を使用する現場の近くにいたことで「間接ばく露」を受け、中皮腫、肺がん、石綿肺などを発症することがあります。
しかも、石綿による健康被害は、発症までには20年、30年以上の長い潜伏期間があるため、退職後や高齢になって初めて被害が明らかになる例も少なくありません。
2 当事務所でのこれまでの取組み
当事務所では、アスベストによる健康被害について、労災申請、特別遺族給付金の請求、国や事業者(雇主)に対する損害賠償請求訴訟などに取り組んできました。建設アスベストに限らず、鉄道、造船、工場など、さまざまな職場での石綿ばく露に関する相談や救済手続にも対応しています。以下では、これまでの主な取組みを紹介します。
⑴ 現場管理を行っていた営業職による事業主に対する損害賠償請求事件
Aさんは、合成樹脂(エポキシ樹脂接着剤)を製造販売している建材メーカー(東邦アーステック)に1972年から91年までの19年間勤務し、営業で受注した補修・改修工事の現場管理を行っていました。
2024年(令和6年)8月8日、東京高裁は、新潟地裁の一審判決を破棄し、事業主に対し、石綿肺や気管支炎・肺線維症を発症したことの安全配慮義務違反を認め、約1045万円の支払いを命ずる逆転勝訴判決を行いました。
東京高裁は、営業職であっても、工事現場に立ち寄り、現場の指示等をしていたことによるアスベストの「間接ばく露」を認定し、労災認定を受けたことを重視して賠償責任を認めたものでした。
⑵ 鉄道の保線業務に従事した旧国鉄の下請会社の従業員の石綿労災を認定した事例
旧国鉄の下請会社に雇われ、軌道設備の保線業務に従事し、中皮腫に罹患した被災者Bさんについて、岩手労災保険審査官は、2023年(令和5年)9月8日付で、被災者の死亡を労災認定と認定し、不支給処分を取り消す決定を行いました。
昭和54年3月から昭和61年4月までの6年間、鉄道の軌道保守作業(保線業務)に従事したことで、中皮腫で亡くなったことを労災と認定した事例です。不支給決定に対する審査請求によって、労災と認められた事例です。
旧国鉄から保線や鉄道土木を請け負う会社に勤務し、駅構内での保線作業、トンネル内での保線作業、レールの継目板の石綿含有絶縁材、鉄道車両のブレーキの摩耗粉じんによる保線作業による石綿ばく露の可能性を認定し、旧国鉄職員でも保線業務での労災が認定されていることから、労災が認められました。
鉄道現場では、鉄道車両のブレーキシューの摩耗粉じん、レール継目板の石綿含有絶縁材、トンネル補修材、鉄道車両に用いられた石綿製品などにより、石綿ばく露の可能性がありました。また、レール下の道床(砕石)をタイタンパーで突き固める作業は、じん肺法施行則別表で定める粉じん作業にあたります。トンネル内や駅構内での作業は屋内作業に近く、健康被害の危険性も高い作業でした。防じんマスク(呼吸用保護具)を支給し、着用を徹底していれば、石綿による健康被害を防ぐことができた可能性があります。
⑶ 溶接工の石綿労災事件(旧新潟鐵工の造船工場)
ガス溶接などで火花を避けるために使用していた石綿布によるばく露や作業現場での石綿ばく露によって、溶接工として造船場や鉄道車両の製造・解体工場に勤務していた人が、肺がん、中皮腫、石綿肺に罹患しています。造船工場に出入りしていた事務職でも石綿関連疾患を発症する場合があります。
新潟市にあった旧新潟鐵工には、造船工場や鉄道車両の製造・解体工場があり、多くの下請企業の労働者がこれらの工場で働いていました。これらの工場で作業していた労働者の中には、肺がん、中皮腫、石綿肺に罹患し、労災と認定された人もいます。旧新潟鐵工の上記工場は、石綿による労災認定があった事業場として公表されています。
新潟鐵工・新潟造船で溶接工として働いた被災者Cさんについて、石綿ばく露による肺がん死亡が争われ、不支給決定の取消訴訟として係属しています。
溶接作業では、火花を避けるために石綿布が使用され、造船現場では配管や艤装の工程で石綿帯が巻かれるなど、周辺作業による間接ばく露も生じます。厚労省が発行している「石綿ばく露歴把握のための手引」でも、造船作業は広く石綿ばく露作業と位置づけられています。それにもかかわらず、肺がんの診断や胸膜プラーク、作業期間などの認定基準を満たしているかをめぐり、特別遺族給付金の不支給決定取消訴訟となっています。
被災者Cさんは、画像診断で肺がんと診断されながら、病理組織検査による「確定診断」がなされていないということで、労災認定がなされませんでした。主治医が廃業してカルテが廃棄され、医療記録が少ない中で、この不支給処分の取消訴訟を現在取り組んでいます。
被害の救済には、職歴、作業内容、医学的資料、胸膜プラークなどの画像所見、同種作業での労災認定例を丁寧に積み重ねることが不可欠です。石綿ばく露は、本人や遺族が当時は危険性を知らされていなかったことも多く、記録が残っていない場合もあります。それでも、同僚の証言、事業場の資料、行政の認定基準、過去の使用実態を調査することで、被害と仕事との関係を明らかにできる場合があります。
3 係属中の保線作業員の国賠訴訟
現在、当事務所が関わっている訴訟の一つに、旧国鉄関連の保線・鉄道土木作業に従事した前記の被災者Bさんの国賠訴訟があります。この訴訟では、軌道設備の保守・解体作業、レールやマクラギ、砕石の突き固めなどの粉じん作業を行う労働者に対し、防じんマスクを支給し、着用を義務づける規制を国が行わなかった責任が問われています。訴訟は結審し、本年10月16日に新潟地裁で判決が言い渡される予定です。
4 さいごに
石綿被害は、発見が遅れやすく、被害者や遺族だけでは制度や証拠にたどり着くことが難しい分野です。建築、鉄道、造船、運送、学校、工場などで働いた経験のある方やそのご家族の中に、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚などの診断を受けた方がいる場合には、労災申請、給付金請求、損害賠償請求ができる可能性があります。
また、石綿被害は、被害者一人ひとりの救済にとどまらず、どのような職場で、どのような形で危険が放置されてきたのかを明らかにする社会的な意義もあります。現在係属中の訴訟にもご注目いただき、傍聴、情報提供、同種被害者への呼びかけなど、可能な形でご支援をお願いいたします。
過去の職場や作業内容に心当たりのある方は、一人で抱え込まず、早めにご相談ください。多くの方の関心と支援が、埋もれた被害の掘り起こしと救済につながります。
当事務所では、アスベストによる健康被害についての給付金や労災申請、訴訟などに取り組んでいます。お気軽にご相談ください。
弁護士 土屋 俊幸
著者:土屋 俊幸
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パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。
あー夏休み

