2026年8月22日
仕事中の熱中症は労災になる?――労災の考え方と会社の予防・対応義務
「少し休めば大丈夫だろう。」
職場の熱中症では、その「様子見」が命にかかわることがあります。しかも、危険なのは炎天下の屋外作業だけではありません。冷房の効かない工場や倉庫、厨房など、屋内でも高温多湿の環境では熱中症が起こります。
厚生労働省によると、令和7年(2025年)の職場における熱中症の死傷者(死亡・休業4日以上)は1,803人で、前年から約43%増え、統計開始以来最多となりました。一方、死亡者は19人で、前年から約39%減りました。厚生労働省は、令和7年6月に施行された改正規則により重篤化防止対策が進んだことが、死亡災害の減少に一定程度寄与したとみています。
1 仕事が原因なら「労災」になる可能性があります
たとえば、次のような状況で熱中症を発症した場合です。
- 炎天下で、長時間の屋外作業をしていた
- 高温多湿で、冷房の効かない場所で働いていた
- 休憩や水分・塩分の補給が十分にできなかった
- 体調が悪くても、作業を続けざるを得なかった
このように、仕事の内容や職場の暑さが原因と認められれば、熱中症も労災保険給付の対象になり得ます。
ここで大切なのは、労災に当たるかどうかと、会社に落ち度があったかどうかは、別の問題だということです。労災認定は、原則として、会社の過失の有無とは別に判断されます。会社が「本人の体調管理の問題」と考えていても、それだけで労災にならないわけではありません。
一方、会社が暑さを把握しながら必要な対策を怠り、そのために症状が生じたり悪化したりした場合には、労災認定とは別に、安全配慮義務違反による損害賠償責任が問題になることもあります。
2 会社に求められるのは「予防」と「早い対応」
熱中症を防ぐには、暑さ指数(WBGT)の把握、涼しい休憩場所と水分・塩分の確保、作業の中断・短縮、体調確認など、職場ぐるみの予防が重要です。
さらに、令和7年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行されました。暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業について、事業者には次の対応が義務付けられています。
- 体調の異変をすぐに報告できる体制を整える
- 作業からの離脱、身体の冷却、受診・搬送などの手順を定める
- その報告体制と手順を、関係する作業者にあらかじめ周知する
大切なのは、熱中症を「出さない」ことだけではありません。異変を早く見つけ、発症した人を一人にせず、すぐに対応できる仕組みを整えておくことです。
3 もし職場で具合が悪くなったら
めまい、ふらつき、大量の発汗、頭痛、吐き気などの異変を感じたら、我慢せず、すぐに周囲へ知らせて作業を離れましょう。涼しい場所へ移動して身体を冷やし、意識がはっきりして自力で飲める場合は水分・塩分を補給します。症状が強い、改善しない、受け答えがおかしい、自力で水分を取れないといった場合は、ためらわず救急車を呼んでください。経過観察中や搬送まで、本人を一人にしないことも重要です。
受診の際は「仕事中に発症した」ことを医療機関に伝えましょう。発症した日時・場所、作業内容、気温やWBGT、休憩や水分補給の状況などを記録しておくと、その後の労災保険給付の請求にも役立ちます。
なお、労災に当たるかどうかを最終的に判断するのは、会社ではなく、労働基準監督署です。会社の証明や協力が得られない場合でも請求はできますので、最寄りの労働基準監督署や専門家に相談してください。
4 最後に
暑さそのものは自然現象です。しかし、暑さの中でどう働き、異変にどう対応するかは、職場で備えることができます。
熱中症を「我慢」や「気合い」で防ぐことはできません。「大丈夫?」と声をかけ、「少しおかしい」と声を上げられる職場の仕組みが、命を守ります。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
著者:深谷 航
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