2008年7月25日
合同結婚で韓国人男性と婚姻した妻に日本での離婚訴訟が認められた事例
統一協会の合同結婚式に参加し、韓国人男性と婚姻した日本人女性の原告Aさんが、韓国に住む夫に離婚と2人の子どもの親権者の指定を求めた裁判で、新潟家庭裁判所新発田支部は、平成20年7月18日、原告の請求を全面的に認める判決を言い渡しました。
これまで統一協会の合同結婚式による婚姻関係については、婚姻届が勝手に出されたり、実質的に夫婦となる意思(実体的婚姻意思)を欠いているような場合は、被告が外国に居住する場合でも、日本の裁判所に婚姻無効確認請求訴訟を出し、判決を得て戸籍を訂正することができました。
しかし、合同結婚式に参加して外国人と婚姻届をし、実際に海外で結婚生活を送った場合は、その後に婚姻関係が破綻して日本に帰国しても、海外にいる相手方を被告にして、日本の裁判所に離婚訴訟を出すことを認めた判例は見あたりませんでした。Aさんも、平成4年8月に行われた合同結婚式に参加して韓国人の被告と知り合い、平成4年12月に新潟市とソウル市に婚姻届。平成5年12月から韓国内で被告と家庭を持つようになりましたが、家庭内暴力等が原因で平成11年3月に夫と別居。日本に帰国した後、夫に離婚を求める手紙を何度か出しても応じてもらえず、途方にくれた状態で8年余りが経過していました。
Aさんのような場合、日本の裁判所に裁判を出すことはできないのか。この点について、今回の新潟家裁新発田支部判決は、次のように判示してAさんの離婚を認め、2人の子どもの親権者をAさんに指定しました。
「離婚等請求訴訟につき日本の国際裁判管轄を検討するにあたっては、法律の定めがなく、国際的慣習法の成熟も十分とはいい難いから、当事者間の公平や裁判の適正迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。そして、その判断に当たっては、応訴を余儀なくされる被告の不利益に配慮すべきことは勿論であるが、他方、原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程度も考慮し、離婚を求める原告の権利の保護に欠けることがないよう留意しなければならない」。そして本件の場合は、原告の収入が月12万円余りで、別居後、被告からは2人の子どもの養育費が全く支払われていないことや、原告は本件訴訟について法テラスの民事法律扶助を受けていること、原告と被告の別居が被告の家庭内暴力など被告側の態度に起因すること等を考慮すれば、「原告が被告の住所地国である韓国に渡航して韓国で裁判手続を提起追行しなければならないとすることは、事実上の障害があるというべきであること、そのような障害をもたらしたのは、究極的には被告側の態度に起因すること、親権者指定を定める部分については、2人の子どもは現在日本国内に居住していること」からすれば、「本件訴訟についてはわが国に国際裁判管轄があると解するのが当事者間の公平や裁判の迅速適正の理念に沿い、条理に合致する」。
このようにしてAさんには、被告と別居してから9年目にして離婚をする道が開かれました。統一協会の合同結婚式で外国人と一緒になり、婚姻関係が破綻して帰国したものの、日本の裁判所に裁判を起こすことができるかどうかの問題で裁判を躊躇している人は、Aさん以外にも沢山いると思いますが、今回の判決は、そのようなケースでも日本の裁判所で離婚裁判ができることを認めた注目すべき判決といえるでしょう。
弁護士 中 村 周 而
著者:中村 周而
さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。
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