2019年1月28日
相続分譲渡と遺留分
Q1
私の母が一昨年5月に亡くなりました。母は預貯金600万円がありましたが、未払介護施設利用料債務が60万円くらいありました。
私には兄と妹がいますが、二人とも県外に住んでいて、近くに住んでいる私が父と母の世話をしていました。
父は自分が相続する分を私にやるので、兄と妹と私の3人で話合って、母の財産を分けるようにと言ってくれました。
父から相続分譲渡を受けたら、私は遺産分割手続きで、父の相続分(1/2)と自分の相続分(1/3)の合計した分の遺産をもらえますか。
A1
相続放棄は放棄した人が相続人でなくなるので、他の相続人全員の相続分が平等に増えます。特定の相続人の相続分を増やしてやりたいときは相続分の譲渡を行うことで、増やすことができます。
あなたがお父さんから相続分の譲渡を受けたときは、プラスの財産だけでなく、借金などの負債も含めて遺産全体に対するお父さんの相続分(1/2)とあなたの相続分(1/6)を合計した2/3の相続分を有する者として遺産の分配を求めることができるようになります。
Q2
母の遺産分割は兄と妹と私の3人の話し合いで預貯金を分けることで解決しましたが、昨年4月に急に父が亡くなってしまいました。
父は、財産を全部私に相続させる旨の公正証書遺言をしてくれていました。父の遺産は預貯金900万円のほか、銀行からの借入金が300万円ありました。
兄、妹は私が父の財産を全部相続するのは遺留分の侵害となるとして、遺産分割調停の申立をして、遺留分の12分の1をほしいと求めています。母の遺産について、父から相続分譲渡を受けたことは遺留分額を計算するうえで、どのような影響がありますか。
A2
遺留分の算定の基礎になる財産は、お父さんが亡くなった時に有していた財産に、お父さんが亡くなる前の1年以内に贈与した財産を加え、債務の全額を控除して遺留分を算定します。
あなたがお父さんから相続分譲渡を受けた価値は、お母さんの預貯金600万円から債務60万円を控除した540万円の2分の1の270万円となります。
最高裁平成30年10月19日第2小法廷判決は、「共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。」としています。この判例によると、あなたはお父さんからの相続分譲渡で270万円の贈与を受けたことになります。
お父さんの遺産相続について、遺留分額を計算する場合に、お父さんの預貯金900万円に270万円を加えた1170万円から銀行の債務の300万円を控除した870万円を遺留分算定の基礎にして計算することになります。
両親が亡くなっているので、お兄さんと妹さんの遺留分は6分の1ですので、各145万円ずつが遺留分に相当する額となります。
弁護士 土屋 俊幸
(事務所誌ほなみ第125号より)
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