新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2013年2月13日

保証人救済の一事例 ~人生、保証人になるべからず~ 

(事務所誌ほなみ第112号掲載)

5月24日、東京高裁において、銀行(その債権譲受会社)の保証人に対する約1億円に及ぶ請求を退ける判決が下されました。
法律家でない読者の方々にはそれが珍しいことなのかわからないかもしれません。しかし、わが国は、ハンコ社会と言われ、ハンコを押してしまった契約書の効力を覆すことは容易ではありません。
保証を頼まれるとき、多くの場合は、「絶対に迷惑をかけない」と言われて保証人となり、ある日突然保証人としての責任を金融機関から問われることになります。保証人は「騙された」と思うことでしょう。しかし、そのことだけでは、裁判所は契約の効力を否定してくれません。なぜなら、保証責任を負うことが明記された契約書に署名してハンコを押している以上、保証人の責任が問われうることを承知していたと考えられてしまうからです。
しかし、東京高裁判決は、「Yが(保証に)応じたのは、X銀行担当者が、『10億の物件が4、5億で買える』『一切迷惑がかからない』『大丈夫、大丈夫』などと発言したことにより、仮に、借主Aが債務を履行しなかったとしても、貸付額をはるかに上回る十分な担保物件があるので、Xが保証人の責任を追及するような事態には至らないと考えたことによる」と述べて、保証契約は錯誤により無効であると判断しました。つまり、保証人になっても、十分な担保があるから、保証人が現実に保証債務を負うことはないと誤信するような事情があったことを認めて、保証契約の効力を否定したのです。
「人生、保証人になるべからず」と言われます。保証人になって得になることがないことはわかっていながら、義理人情により断りきれずに保証してしまう。そして、ある日突然高額な請求書が舞い込み、一生をかけて蓄えた資産が奪われてしまう。保証人は、まさしく被害者です。
この度、保証人勝訴の判決を勝ち取ることができたのは、保証被害を受けた当事者の方の熱意と、裁判所が保証被害の実態を正面から見据えてくれたことによるものです。「保証債務を現実に負うことはないと思っていた」という事例において、その事情次第では、保証人の責任が否定されることがあることを示したもので、保証人の救済への道を開く画期的な判決です。
今回の事案でも、銀行側の杜撰な説明が保証被害を生んでいます。近時、金融庁は、銀行向けの「監督指針」を制定し、保証契約時の銀行の説明義務を強化するに至っています。銀行側の貸し手責任を強化し、保証被害がなくなっていくことを願ってやみません。

弁護士 近 藤 明 彦

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の皆様の満足と納得を最優先にし、安心感を得ていただけることを目標として頑張っています。以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が多く、そのことが私にとって大きな励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えるからです。

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