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2014年3月23日

環境省は水俣病「新通知」の撤回を

 この3月7日、環境省が出した水俣病の認定に関する新通知(正式には環境省環境保健部長名で新潟県や関係自治体に出された「公健法に基づく水俣病の認定における総合的検討について」と題する通知)に対して、これでは水俣病患者の認定をさらに狭くし、これまでの被害者切り捨て策を強化することになりかねないという声が高まっています。

 新潟水俣病共闘会議など関係4団体も、3月17日、環境省に対して、新通知の撤回と、全水俣病患者の救済と水俣病問題の全面解決のために、患者側と協議して抜本的な対策と方針を樹立するよう求める声明を発表しました。

 新通知によれば、平成25年4月の最高裁判決で、水俣病の認定にあたって総合的検討の重要性が指摘されたことを受けて、52年判断条件にいう総合的検討のあり方を整理したという記載になっていますが、どのようなメンバーが参加して、どのような議論がおこなわれたのか全く不明です。

 そして、新通知をよく読むと、さまざまな疑問が出てきます。

 まず、新通知が随所で引用している平成3年11月26日の中央公害対策審議会答申(中公審答申)と新通知との関係。20年以上も前に出されたこの答申には、「四肢末梢の感覚障害のみで水俣病とすることには無理がある」と明記されており、このような見解は、四肢末梢優位の感覚障害のみの水俣病を認めた平成25年の最高裁判決によっても否定されています。新通知は、このような誤った答申の都合のよい部分だけを引用し、結局は、水俣病の認定をさらに狭くしようとしているのではないかと思えてなりません。

 この点でとくに問題なのは、新通知が、平成3年の中公審答申を引用して「阿賀野川流域では昭和41年以降、水俣病が発生する可能性のあるレベルの持続的メチル水銀ばく露が存在する状況ではなくなっている」と決め付けたり、「ばく露後発症までの期間は、メチル水銀では通常1ヶ月前後、長くとも1年程度まで」としていること。しかし、水俣病の症状が発現するまでに長期間を要する症例や、加齢によって水俣病症状が発現する加齢性遅発性水俣病の症例も多数報告されています。このような患者も、当然、水俣病と認定されるべきです。

 さらに問題なのは、新通知が、水俣病が発生してから半世紀を経た今になって、「総合的検討」の口実で、患者の体内の有機水銀濃度の値などの客観的資料の提出を患者側に要求していること。しかし、多くの被害者は、そのような数値の検査はしていませんし、認定にとって必要不可欠なものではありません。そのような値がなくても、被害者の生活状況をできるかぎり丁寧に把握すれば、汚染された魚介類をどの程度食べたのか、どのような症状に苦しんできたのかを把握することは十分可能です。

 このように重大な問題点や疑問をはらんでいる新通知は、直ちに撤回されるべきです。

(弁護士 中村周而)

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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