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2015年8月19日

新潟県職員過労自殺事件 訴訟で和解

 新潟県職員であった大橋和彦さんが自殺した件について、地方公務員災害補償基金新潟県支部審査会は、平成21年1月、大橋さんの自殺は長時間労働を原因とする公務上の災害であると判断しました。

  その後、大橋さんの遺族は、新潟県に対して再発防止への取り組みと故人の名誉回復を求めて、県との間で交渉を行ってきましたが、県側の対応が不十分であると考えたことから、平成24年12月、大橋さんが自殺したのは、新潟県が職員の健康に対する安全配慮義務を怠った結果であるとして、新潟県に対して損害賠償を求めて新潟地方裁判所に提訴し、以後、審理を行ってきました。

約2年半に及ぶ審理の結果、本年7月21日、新潟地方裁判所において、原告(大橋さんの遺族)と被告(新潟県)の間で、和解が成立いたしました。その内容の要旨は、次のとおりです。

「1 被告は、被告の職員であった大橋和彦が自殺した件について、大橋和彦に対し、哀悼の意を表する。

 2 被告は、本件と同様の事態が繰り返されることのないよう、再発防止に努める。

 3 被告は、原告らに対し、本件解決金として、2000万円の支払義務があることを認める。

 以下(略)」

この和解は、公務災害の認定により逸失利益に該当する損害については既に実質的な補償がなされており、公務災害認定により填補されない慰謝料相当額をベースとした解決金を新潟県が遺族に支払う内容のものであり、新潟県の法的責任が実質的に認められたものと評価できること、本件に関しては、教育長や知事によって、謝罪や再発防止の意思が述べられていましたが、この度県議会の議決を経て、正式に、新潟県として、故人に対して哀悼の意が示され、再発防止を約束させることができたことによって、故人に対する名誉回復及び再発防止への取り組みが期待できることから、遺族にとって意義のある解決となりました。

大橋さんのケースは、過労死基準を超える月100時間以上の時間外勤務が繰り返されたこと、上司らに対して、職場での苦しみや体調不良を訴えていたにもかかわらず、適切な対応がなされなかったこと、大橋さんがうつ病にかかり通院している事実を認識していたにもかかわらず、病状の改善を確認しないまま、再度長時間労働に従事させたことなど、新潟県の対応には多くの点で問題があり、今度同様の事態を招かないようにするための数々の教訓が含まれています。

新潟県が和解で行った「再発防止に努める」との約束が、言葉だけのものに終わらないよう、再発防止に向け真摯な取り組みが行われることを望みたいと思います。

 (弁護士 近藤明彦)

著者:

話しやすい雰囲気で相談・打合せを行い、丁寧な事件処理をすること。依頼者の方の納得を最優先にし、依頼者の方から感謝されることを目標に頑張っています。個人的には、以前依頼者であった方から、別の事件の相談を再び受けること(リピート)、別の相談者を紹介していただくこと(孫事件とでも言いましょうか)が非常に多く、そのことが大変に励みになっています。お客様から満足していただけたかどうかのバロメーターであると考えられるからです。

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