2012年5月9日
不動産に関する法律相談 不動産の売買契約(その4)
今回は、手付金について説明します。
手付は、契約締結に際し、当事者の一方から相手方に対して交付される金銭等の有価物をいいます。「手付」という言葉は、複数の意味で利用されますが、基本的には、買主が手付金を放棄して契約を解除でき、売主が手付金の倍額を買主に払って契約を解除することができることを意味します(解約手付)。手付は、当事者が一定の負担を条件に売買契約を自由に解除できる制度なのです。
もっとも、手付金を交付しても、先に相手方が売買契約の「履行に着手」した場合、解除はできません。たとえば、買主が代金を売主に直接持参し受け取りを求めた場合は、買主は売買契約の履行に着手したといえるため、売主は契約を解除できません。また、売主・買主以外の人が所有する不動産の売主が人からその不動産の所有権移転登記を受けた場合には、売主が売買契約の履行に着手したといえるため、買主は契約を解除できません。義務の遂行にとりかかった当事者は契約内容の実現に対する期待を持っているため、他方当事者の解除を制限する必要があるのです。
なお、買主が売主に対して手付金を交付したものの契約が解除されない場合もありますし、実際にはこのようなケースが多いでしょう。この場合には、手付金は売買代金の一部の支払いに充てられるというのが契約における実務です。
手付金に限らず、不動産の売買契約に関してご相談したい方は、当法律事務所の弁護士までご連絡ください(025‐245‐0123)。
弁護士 加賀谷達郎
著者:加賀谷 達郎
新潟県よりさらに冬が厳しい秋田県で生まれ育ちました(北海道に住んだこともあります。)。縁あって、学生時代を過ごした新潟で、弁護士として活動することができ、嬉しく思います。「弁護士」と聞くと「なるべく関わりたくない」という方が大多数かと思いますが、ご依頼された場合、法律・裁判例を念頭に置きながら、「依頼者の方にとって一番良い解決は何か」を考え、業務に務めたいと思います。雪国育ちですが、スキーはできません。しかし、寒さ・辛さにも耐える我慢強さ、簡単にあきらめない粘り強さには自信があります。TVドラマで登場する弁護士の様な華麗さはないですが、依頼者の方と誠実に向き合い、粘り強く、少しでも良い解決を目指したいと思います。