2014年2月19日
「可視化」が危ない
報道によれば、取調べの可視化(録音・録画)の制度化などを検討している法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」において、警察・検察関係の委員は、未だに「(録音・録画をすれば)捜査活動が萎縮しかねない」などと言って、裁判員裁判事件のみを可視化の対象にすべきだと主張しているとのことです。
裁判員裁判対象事件は、全事件の3%にも充たないものであり、それだけを可視化しても、取り調べの適正化は実現できるはずがありません。
そもそも特別部会が設置された趣旨は、取調の全面可視化を中心として、捜査の適正を確保し、捜査機関の暴走を抑制して、冤罪を根絶するという方向での提言を行うものだったのではないでしょうか。
ところが、今の議論の状況を見ると、取調の可視化については実効性ある制度にはほど遠いという状況である一方、通信傍受など新たな捜査手法については、捜査機関側の権限を拡大する方向での提言がなされており、もともとの出発点である捜査機関の暴走についての反省とその抑制という観点は全く置き去りにされているのではないかと強い危機感を覚えます。
直ちに特別部会の本来の目的に立ち戻って、実効性のある「可視化」を実現させるべきです。
弁護士 小川 和男
著者:小川 和男
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