2014年6月3日
医療事故(民事賠償請求)のはなし(5)
医療事故の調査について(その1)
「お金を貸したのに返してくれない場合」と比較しましょう。
お金を貸した場合、その内容すなわち、いつ、どこで、誰に、いくら、どういう条件で貸した、という最も大切な事実について、本人が一番よく知っているのが普通です。借用書や領収書などの重要な書類も持参できるはずです。すると弁護士は、最初の相談からすぐに対策を立てることができます。
ところが、医療事故は違います。
「感嘆な盲腸炎の手術と説明され、手術を受けたのに、手術室から出てきたときは意識不明で、数日後には死亡した場合」を考えてみます。
もちろん「何かミスがあったのではないか」と疑いを持つことはできます。しかし、手術室の中でいったいが起きたのか家族には分かりません。どんなミスがあったのかも分かりません。
麻酔に問題があったのか? 盲腸の摘出方法に問題があったのか? 投与された薬剤に問題があったのか? ・・・・
まずは、手術中に何が起こったのか事実経過を確認しなければ前に進めません。事実経過を確認する資料として、まず診療記録(カルテなど)の写しを手に入れることが必要です。
十年くらい前までは、患者やその家族が「カルテの写しを下さい」と頼んでも、すんなりくれる医療機関は少数派でした。しかし、情報公開の大切さが知れわたったこともあり、今ではたいていの医療機関(個人医も含め)が、実費さえ負担すればカルテの写しを交付してくれるようになりました。もし自分でそれができれば経費を節約にもなります。
ただ、依頼してもなかなか交付してくれなかったり、法律的な追及を予想してカルテを改ざんする危険も無いとは言えません。そんな場合は、裁判所が乗り込んで、コピーや写真でカルテ等の写しを手に入れてくれる「証拠保全手続」を活用することになります。
(弁護士 金子 修)
著者:金子 修
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