2015年1月30日
エコキュートによる低周波騒音
エコキュートによって健康被害を受けたとして隣家から、その撤去を求められたという事例がありました。
エコキュートの消費者安全調査委員会の調査報告
2014年12月、消費者安全調査委員会(消費者事故調)は、「エコキュート」と呼ばれている家庭用ヒートポンプ給湯機による低周波の健康被害の調査報告書で、明確に因果関係があるとはしなかったものの、不眠などの「健康症状の発生に関与している可能性がある」との見解を示しました。
低周波騒音を御存知ですか。
低周波音は100㎐以下の周波数の音域の音です。おおよそ200㎐付近までは低くて重い感じの音として聞こえます。聞き取ることができない音域の20㎐以下の領域を「超低周波音」と呼ばれています。新幹線がトンネルに突入するときに発生したり、鉄道や道路の高架橋で発生することから公害の騒音として、「低周波空気振動」と呼ばれたこともありました。低周波音は非常に高い音圧の音が発生していても、聞き取り難い音域であるため、気がつかなかったり、超低周波音ではまったく聞き取れません。大きな音であれば、住宅の建具などの振動として現れることで、それに気がつくことがあります。
近年、家庭用住宅設備によって低周波音が発生し、設置した住宅に住む人だけでなく、隣接する建物に住む人にも健康被害が生じている事例が問題となっています。
日本建築学会でも「住宅の設備機器を対象とした低周波数領域の音と振動問題への対応資料」(2010年10月1日発行)を低周波音の測定法やその分析評価など住宅機器による低周波音と振動による対応資料を出しています。
オール電化で急速に普及した「エコキュート」と呼ばれる家庭用ヒートポンプの給湯機による騒音・振動が問罪となることがあります。エコキュートはその運転時に100㎐以下の音が発生することが知られています。小さい音であれば支障がないといえますが、夜間の電力を使用して作動するために深夜の寝静まったときにその運転音が騒音・振動の被害を生じさせる可能性があります。エコキュートによる騒音・振動によって健康被害が生じたとして訴訟となった事例もあり、消費者庁の消費者安全調査委員会に健康被害の調査の申出がなされていました。
業界団体の騒音等防止の据付けガイドライン
家庭用ヒートポンプ給湯機(エコキュート)を製造している業界団体である「社団法人日本冷凍空調工業会」は「騒音等防止を考えた家庭用ポンプ給湯機の据付けガイドブック」を作成し、据付け位置や方法によって騒音等の苦情がでる可能性があることを指摘し、騒音等を防止するための据付け方法のガイドラインをもうけています。エコキュートはお湯を貯める貯湯ユニットではなく、お湯を暖めるヒートポンプユニットが深夜の作動で音を発生します。ヒートポンプユニットを設置した場所によって、塀や壁による音の反射で運転音が増大したりします。隣家や自宅の床下換気口、窓の近くに設置することで低い重い音が聞こえてきたりします。
それぞれ違う低周波音の感じ方と健康被害
低周波音は中高音領域の音と違い、誰もが容易に聞こえる音域ではないので、大きな音が出でていても、聞こえ方に違いがでます。人によって聞こえ方が異なるため、同じ同居の家族でも必ずしも同じように不眠症の症状を訴えるわけではありません。「気のせい」ということが見過ごされてしまうこともあります。低周波音による影響も個人差があるため同居者に同じ症状ができるわけではありません。
低周波音による健康被害の症状は不眠ですが、その他にめまいや頭痛、吐き気などを生ずることがあり、日常生活に著しい影響がでる被害となる事例も報告されています。
低周波音の音圧レベルについては、周波数ごとに「心身に係る苦情に関する参照値」があり、この音圧を超えると何らかの心身に影響が生ずる可能性があるとされています。自宅や隣の家のエコキュートの低い重い音が聞こえ、運転音が気になってよく眠れないという方が家族にいらっしゃる場合は低周波騒音による健康被害を受けているのかも知れません。
低周波騒音と健康被害の因果関係については未だ解明されていない面はありますが、エコキュートを設置した業者や燐家と、調停の申立などによる話し合いで解決できることもありますので御相談下さい(弁護士 土屋俊幸)。
著者:土屋 俊幸
パソコンのハードとOSに強く、当事務所のパソコン機器のメンテナンス係りです。自分で高性能のパソコンを自作しています。オーディオが趣味で、最近では、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器(DAC)にiPadをつなぎ、どのUSBケーブルだと良い音ができるのかを試行錯誤をしています。ハイレゾ音源とYouTubeのヒアノ演奏や交響楽団の演奏を真空管アンプで、30年前に買ったスピーカーで、音の歪みのもたらす音に聴き入る時間をつくりたいと思っています。論文検索や技術情報の収集など情報検索を駆使しての情報集めを得意としています。オーディオの世界と仕事では燻銀の経験と粘りで頑張っています。
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