新潟合同法律事務所(新潟県弁護士会所属)

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2014年5月26日

司法は生きていた-大飯原発差止訴訟

 マスコミでも大きく報道されたように、大飯原発運転差止訴訟で、5月21日、福井地裁(樋口英明裁判長)は、関西電力に対して、「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」と命ずる画期的な判決を言い渡しました。これまで差止めが認められた例は地裁と高裁で1件ずつありますが、福島原発事故後に差止めが認めたのは、今回が最初です。

 この判決を読んでとくに印象に残ったのは、裁判所が、「人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、その侵害の理由、根拠、侵害者の過失の有無や差止めによって受ける不利益の大きさを問うことなく、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できる」という極めて明快な判断を最初に示していること。

 そのうえで判決は、「生命を守り生活を維持する利益は人格権の中でも根幹部分をなす根源的な権利」であり、「本件ではこの根源的な権利と原子力発電所の運転の利益との調整が問題になっている」が、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属し、憲法上は人格権(憲法13条、25条)の中核部分よりも劣位に置かれるべきであり、「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。かような危険を抽象的にでもはらむ経済活動は、・・少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である」と言明しています。

 そして、「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる」から、「本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる」としています。

 判決は、原子力発電所の特性、地震と冷却機能の維持の問題、使用済み核燃料の危険性、本件原発の現在の安全性と差止めの必要性等について詳細に検討し、結論として、「原告らのうち、大飯原発から250キロメートル圏内に居住する者」は、「本件原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められるから、これらの原告らの請求を容認すべきである」といて、3号機と4号機の運転の差止めを命じています。

 とても説得力があり、原発再稼働を憂慮する多くの人々を勇気づてくれる判決です。判決のテレビ報道の中で、支援者の一人が両手で大きく掲げていた「司法は生きていた」という旗出しの言葉がとても印象的でした。

                                                                                           弁護士 中村周而 

著者:

さまざまな問題を依頼者の皆様と一緒に考え、解決をめざします。 最近は、社会の高齢化が進む中で、高齢者をめぐる貧困、医療、介護、家族との関係などさまざまな問題が深刻さを増しています。私もそうですが、団塊の世代を含めた高齢者が、もっと声を大にして問題の深刻さを訴える必要がありそうです。

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